建物の燃費とは?
「燃費」と聞くと、1リットルのガソリンで何キロメートル走るかという、自動車の経済性の指標を想像される方が大半だと思います。「建もの燃費ナビ」も自動車の燃費と同じく、その建物で人が快適に暮らすために必要なエネルギーを算出する解析ソフトです。アプリコット建築研究所も賛助会員として加盟するパッシブハウス・ジャパン(省エネ先進国ドイツ発祥の超省エネ住宅を日本の気候・風土に合わせて作り出し、建築の省エネを通じ地球環境と住環境を良くする団体)でも推奨をされています。
算出には、建設されるエリア地域(気候情報)、周囲に建っている建物による太陽光の入り方への影響、間取り、屋根形状、断熱材の材料、窓、空調・換気機器の性能などを入力します。これにより、1年間に必要な床面積当たりのエネルギー、熱損失の部位の割合、エネルギー消費の割合(冷暖房、給湯、照明など)おおよその月別光熱費などがグラフで分かりやすくアウトプットされます。設計者は、これらのアウトプットを見ながら、窓の位置や数、建物の形の検討を行っていきます。

建物の燃費が自動車の燃費と異なるのは、建物は一つとして同じものがない点です。建売住宅で全く同じ間取り・材料というのは存在しますが、それであっても立地や隣接する建物の影響により燃費が変わってくるのです。
建もの燃費ナビでランニングコストを予測する
住宅を建てる前の設計段階で燃費がわかる最大のメリットは、自動車の場合と同じく経済的な理由です。住宅の燃費がわかれば、長期的なランニングコストを含めた判断ができます。将来の電気料金やガス料金が不透明な時代において、消費エネルギーが少なくて済むことは大きなメリットがあります。高断熱・高気密住宅は初期費用が高くても、光熱費が安いため、長期的には経済的というケースもあります。

建もの燃費ナビであいまいな省エネ性能を明確にする
また、建もの燃費ナビには公平な比較検討を助ける役割もあります。住宅会社がつくる住宅には「省エネ住宅」「高断熱住宅」「エコハウス」など会社ごとにそれっぽい様々な名称があります。しかし、具体的な数値がなければどの住宅が本当に省エネなのか比較できません。燃費が数値化されることで、消費者は客観的なデータをもとに住まいづくりの依頼先を選べるようになります。
建物の燃費向上は地球全体の課題
さらに、建物の燃費を良くする理由には、地球環境への負荷を考える側面もあります。住宅のエネルギー消費は、全エネルギー消費の中で大きな割合を占めています。燃費の良い住宅が普及することで、CO2排出量の削減につながり、地球温暖化対策にも貢献します。そのような理由から、ヨーロッパ、中国、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどでは、以前より省エネ基準適合の義務化がありました。
一方、日本では長期優良住宅など一部の住宅にのみ緩い基準があったに過ぎませんでした。そのような日本でも、ようやく2025年4月よりほぼすべての建物の建築に省エネ基準(断熱材・窓・一次エネルギー)適合の義務化を求めました。
まとめ
自動車を購入する際に燃費を気にしない方はいないと思います。それなのに、車の10倍以上も高額な住宅について燃費を気にされることは、ほとんどありませんでした(住宅メーカーが伝えていなかったというのが正しいのかもしれません)。
住宅の燃費は暮らしのランニングコストを左右するだけでなく、建物の価値にも影響します。欧州では既に建物の燃費性能が不動産価値に影響しており、その考え方は近いうちに日本でも一般化すると考えるのが妥当です。
アプリコット建築研究所では、みなさまのお住まいを設計する段階で1棟1棟に建もの燃費ナビをお作りしています。未来を考えた住まいづくりのこと、ぜひご相談ください。

